養育費のための給料差押え1 | とのさき司法書士事務所

養育費のための給料差押え1

現在、養育費が支払われている離婚母子世帯の割合は、全体の2割程度と、非常に低くなっています。

離婚当初は支払われていたが、途中から支払われなくなったというケースも多くありますが、そもそも、離婚するときに、養育費の取り決めをしていないという事例が60%以上ありますので、養育費の支払率が低いのも当然です。

しかし養育費の請求というのは法律上も認められている権利ですから、別れた夫が支払ってくれないからと、泣き寝入りすることはありません。

子どものためにも、できる限り支払ってもらいましょう。

そこで、今回は、離婚の時に公正証書や調停調書で養育費の取り決めをしたにもかかわらず、旦那が養育費を支払わないという場合に、どうやって支払わせるか、その方法についてお話をします。

もちろん、離婚時に養育費の取り決めをしなかった、あるいは取り決めはしたが、公正証書や調停調書などの書類は作らなかったとしても、諦める必要はありません。こういったケースについては、改めて説明することにします。

給料の差押えがベスト

公正証書や調停調書がある場合には、強制執行という手続をすることが可能です。いわゆる差押えというやつです。

差押えには、不動産の差押え、自動車の差押え、銀行預金の差押えなど、差押えの対象によっていろいろ種類がありますが、中でも、最も容易で効果的な方法は、給料の差押えです。

まず、給料の差押えの特徴について解説します。

給料差押えのシステム

給料の差押えをするときは、裁判所を通じて、債務者と第三債務者に通知が行きます。

例えば、あなたが元夫の給料を差押えた場合には、裁判所は、元夫に対して、給料差押えの申立があったことを知らせます。

そして元夫が勤務する会社には、「給料差押えの申立があったから、次の給料日からは、まず一部を元奥さんに支払って、その後で残った分を元夫に支払うようにしてください」と通知するわけです。

つまり、あなたは元夫の給料の中から、養育費を優先的に回収できるということです。

将来の養育費も一度の手続で差押え可能

まだ発生していない養育費についても、1回手続をするだけで差し押さえられるというのが、給料の差押え手続最大の特徴です。

まだ発生していない養育費とは、来月分とか、再来月分とかのことです。

普通の差押えの場合、当然、支払期限が来ていない分については差押えができません。

例えば、AがBにお金を貸したとして、返済期限が3か月後なのに、「Bはちゃんと返済しそうにないから、今のうちに差押えの手続をしておこう」というのは絶対無理ということです。

返済期限がやってきて、実際に返済されなかった場合に、ようやく手続ができるわけです。

ところが、養育費の未払で給料を差し押さえた場合、これまでの未払分に加えて、来月分以降の将来的な養育費についても、給料の差押えの効力は続きます。つまり、一度給料差押えの手続をしてしまえば、翌月以降は、何もしなくても、自動的に給料が差押えられ、養育費を優先的に回収することができるのです。

この制度のおかげで「また養育費が支払われないかも」という心配をしなくてすむわけです。

差押え対象がわかりやすい

債権の差押えというのは実は難しいのです。

一番メジャーな債権と言えば、金融機関の預貯金ということになりますが、これを差し押さえる場合には、どの銀行のどの支店に口座があるかを、差し押さえる側で調べなければなりません。

裁判所は手伝ってはくれませんし、もちろん銀行も教えてはくれません。

どこかの銀行には絶対口座があるのだければ、どこの銀行のどの支店かがわからないという場合、方法としては、可能性のある銀行の支店全てを対象として、裁判所に差押えの申立をするしかありません。

また、予想があたって、申立をした中に差押えられる口座があったとしても、差押えをしたタイミングが悪く、その口座にお金が入っていなければ、差押えは全く無意味、いわゆる空振りということになります。

その点、元夫の職場を探すことは、そう難しくはありませんし、給料は毎月入ってくるわけですから、空振りということもありません。

給料差押えの問題点

良いことずくめと思われる給料差押えにも、気をつけなくてはいけない点があります。

それは、勤務先に差押えの事実がばれてしまうことにより、対象者が職場に居づらくなって、退職してしまう可能性があるということです。

大手企業や公務員であれば、そういう心配は少ないかもしれませんが、そうでない場合には、退職後そのまま行方をくらましてしまうということも考えられます。

そういった危険を回避するために、対象者に事前に「給料差押えの準備をしているから、それがいやなら養育費を支払ってくれ」と伝えるという方法もあります。

どうするのが良いかは、ケースバイケースだと思いますが、給料の差押えをする場合には、その点を十分に検討する必要があります。